ニュース ・ 2026年10月14日
家の図面づくりを頼むとき、契約書はどうなる? 2027年4月からの建築士法
ニュースの『なんで?』が、わかる。
まず、身近な疑問から
家づくりで、図面などをお願いする約束は、これからどうなるのでしょうか。家を建てるとき、まず、どんな家にするかを図面にかいてもらう仕事があります。工事が始まったら、図面のとおりに進んでいるかを確かめてもらう仕事もあります。この二つの仕事を、「建築士」という免許を持った人にお願いすることがあります。
たとえば、仮の話ですが、「図面は何枚?」「お金はいつ払う?」「やめたいときは?」と、あとで分からなくなったら、困りますよね。
こうした「お願いするときの約束」の決まりが、令和9年4月1日(2027年4月1日)から変わります。
何が変わるの?
いまの決まりで、お願いする約束を書類に書いて渡し合うことになっているのは、建物の広さ(延べ面積)が300平方メートルを超える新築などです。令和9年4月1日(2027年4月1日)から、この「広さ」の条件がなくなります。これからは、広さを問わず、建築士が行う設計や工事監理をお願いする約束は、すべて対象になります。
ただし、家に関する約束がぜんぶ対象になるわけではありません。対象なのは、建築士が行う設計や工事監理をお願いする約束です。家を建てる工事そのものをお願いする約束とは、別のものです。工事そのものをお願いする約束(工事請負契約)の決まりは、この記事では調べていません。
国土交通省の改正法要綱では、この書類のことを「契約書」と書いています。書類には、名前を書いたり、はんこを押したりして、おたがいに渡し合います。
図面(と仕様書)をつくることを「設計」といいます。工事が図面のとおりに進んでいるかを確かめることを「工事監理」といいます。法律では、設計をお願いする約束を「設計受託契約」、工事監理をお願いする約束を「工事監理受託契約」とよびます。
もう一つ、見積書についての決まりも、新しくできます。見積書とは、設計や工事監理のお金が、どんな計算でそうなったのか、そのもとになることを書いた書類です。見積書を作るよう努めるのは、建築士の事務所を開いている人(開設者)です。
契約の書類と見積書では、決まりの強さがちがいます。
契約の書類については、法律に「相互に交付しなければならない」と書かれています。これは、やらなければいけない決まりで、「義務」といいます。
見積書については、法律に「作成するよう努めなければならない」と書かれています。これは、「作りなさい」とまでは決まっておらず、「作るようにがんばりましょう」という決まりで、「努力義務」といいます。見積書を作らなかったときに、どうなるのかは、確認した資料には書かれていません。
たとえば、仮の話ですが、「宿題をやりなさい」が義務、「宿題をやるようにがんばろうね」が努力義務のようなちがいです。まとめると、契約の書類は「やらなければいけない」、見積書は「できるようにがんばる」です。
どうして変わるの?
国土交通省の発表には、この法律の目的が、「将来の建築士等を確保するとともに、契約の適正化を図ること」と書かれています。ここでいう「契約の適正化」は、契約が正しく整った形になるようにすること、と読めます。ただし、なぜ小さな建物の約束まで、書類を渡し合う決まりにしたのか、くわしい理由は、確認した資料には書かれていません。
見積書については、条文に、「報酬の算定の根拠を明らかにするための見積書」と書かれていて、お金の計算のもとをはっきりさせる書類です。なぜ見積書は「義務」ではなく「努力義務」になったのかは、確認した資料には書かれていません。
つぎは、分かりやすくするための仮の例で、公式の説明ではありません。たとえば、仮の話ですが、書類に書いてあれば、「図面は何枚の約束だった?」とあとで見直せます。
自分はどうすればいい?
令和9年4月1日(2027年4月1日)より前に結んだ約束は、これまでの決まりのままです。令和9年4月1日(2027年4月1日)以後に結ぶ約束が、新しい決まりの対象になります。いま、建築士に設計をお願いしようとしているなら、約束を結ぶ日が、この日より前か後かを確かめましょう。
約束を結ぶときは、書類に、つぎのことが書かれているか、見てみましょう。法律には、契約を結ぶときに書類に書く項目が決められていて、主なものはつぎのとおりです。
・どんな図面をつくってもらえるのか(図面の種類)。
・工事を確かめる仕事をお願いするときは、どうやって確かめるのか、その様子をどうやって知らせてもらえるのか。
・担当する建築士はだれで、どの免許(一級・二級・木造)を持っているのか。
・お金はいくらで、いつ払うのか。
・契約をやめるとき(解除)は、どうなるのか。
紙の代わりに、電子の方法で書類の内容を渡すこともできますが、そのときは、受け取る側の承諾が必要です。この電子の方法の決まりは、いまの法律にもあり、改正法でも引き続きあります。電子の方法で、署名やはんこをどう扱うかは、確認した資料には書かれていません。
見積書は、作るように努めることが決まりなので、もらえるとは限りません。お金の内訳が知りたいときは、見積書があるか、聞いてみましょう。
たとえば、仮の話ですが、中古の家のリフォームで、図面づくりを建築士にお願いするとします。この場合に新しい決まりが当てはまるかは、お願いする内容が建築士の設計や工事監理か、そして約束を結ぶ日がいつか、で考えます。分からないことは、約束を結ぶ前に、相手の建築士事務所に聞いてみましょう。
まとめると、確かめることは三つです。一つ目は、約束を結ぶ日が、新しい決まりが始まる日より前か後か。二つ目は、書類に、図面、確かめ方、担当の建築士、お金、やめるときの決まりが書かれているか。三つ目は、見積書があるかどうかです。
もう少し詳しく
正式な名前と日付、今の決まりとの比べ、電子の方法、見積書、改正前の約束、建築士になる条件、確認できていないことを見る(読みたい人だけ)
この記事の情報確認日(2026年10月14日)
この記事は、国土交通省・参議院・e-Gov法令検索の公式ページを、この日に確認して書いています。
制度や日程は、あとから変わることがあります。
最新の状況は、国土交通省のホームページなどで確認してください。
正式な名前と日付
改正されたのは「建築士法」という法律で、改正法の名前は「建築士法の一部を改正する法律(令和8年法律第74号)」です。
この改正法は、令和8年7月(2026年7月)に公布されました。
令和8年10月6日(2026年10月6日)に、施行の日を決める政令と、施行に必要な規定を整える政令(建築士法施行令の改正)が、閣議決定されました。
国土交通省の発表では、政令の公布は令和8年10月9日(2026年10月9日)、施行は令和9年4月1日(2027年4月1日)とされています。
官報などで、公布されたことそのものは、この記事を書いた時点では、直接確認できていません。
令和9年4月1日(2027年4月1日)から、この決まりが始まります。
この日から始まるのは、改正法の附則に書かれた「第一条第二号」の規定で、契約の書面と見積書に関する部分です。
いまの決まりと、これからの決まりの比べ
改正法は、契約の書類を渡し合う決まりの条文から、「延べ面積が三百平方メートルを超える建築物の新築に係る」という限定の言葉を削ります。
いまの法律には、増築や改築、大きな修繕や模様替えのときも、「新築」とみなして同じ決まりをあてはめる、と書いた項があります。
改正法は、この項を削ります。
つまり、改正後は、新築かリフォームかではなく、「建築士が行う設計または工事監理か」で、対象が決まります。
このほか、国土交通省令で定める事項も、書類に書くことになっています。
書類に書く項目のうち、契約の内容が変わるときは、その変更の内容も書類に書いて、おたがいに渡し合います。
改正法は、この項目(設計図書の種類、照合・報告の方法、担当する建築士、報酬と支払の時期、契約の解除)の部分を、変えていません。
国土交通省の発表の題名にも、「書面契約義務化」という言葉があります。
| 区分 | いまの決まり | 令和9年4月1日(2027年4月1日)以後 |
|---|---|---|
| 契約の書類を渡し合う決まりの対象 | 延べ面積が300平方メートルを超える建築物の新築等に係る設計受託契約・工事監理受託契約 | 建築士が行う設計または工事監理に係る設計受託契約・工事監理受託契約のすべて(延べ面積等は問わない) |
| 契約の書類に書く項目 | 設計図書の種類、照合・報告の方法、担当する建築士、報酬と支払の時期、契約の解除に関する事項、国土交通省令で定める事項 | 同じ項目(改正法は、項目の部分を変えていない) |
| 委託代金についての努力義務 | 報酬の基準に準拠した委託代金で契約するよう努める | 見積書の内容などを考え、委託の内容に応じた適正な委託代金で契約するよう努める |
電子の方法で書類を渡すとき
条文には、書類を渡す代わりに、相手の承諾を得て、情報通信の技術を使った方法(国土交通省令で定めるもの)で、書類に書くことを提供してもよい、と書かれています。
この場合は、書類を渡したものとみなされます。
改正法でも、この電子の方法の条文は、番号がかわるだけで、残ります。
国土交通省令で決められる電子の方法の中身や、承諾の手続きの細かい内容は、この記事では確認していません。
施行令を改正する政令の案には、「書面の相互交付義務の対象の拡大に伴う規定の整備を行う必要がある」という理由が書かれています。
見積書と、委託代金(努力義務)
建築士事務所の開設者は、設計などの業務に係る契約を結ぼうとするときは、報酬の算定の根拠を明らかにするための見積書を作成するよう努めなければならない、と書かれています。
契約を結ぼうとする人は、見積書の内容などを考えて、委託の内容に合った適正な委託代金で契約するよう努めなければならない、とも書かれています。
国土交通省の改正法要綱の見出しも、「見積書の作成等についての努力義務」となっています。
見積書を作らなかったときに、どうなるのかは、確認した資料には書かれていません。
改正前に結んだ約束
改正法の附則には、新しい決まりは、始まる日以後に結ぶ約束に当てはめ、それより前に結んだ約束は、これまでのやり方による、と書かれています。
つまり、令和9年4月1日(2027年4月1日)より前に結んだ約束には、この新しい決まりは当てはまりません。
建築士になる条件の変更は、別の日
改正法には、建築士の免許や試験の条件をゆるめる内容も入っています。
例として、二級建築士が一級建築士の免許を受けるために必要な、二級建築士としての実務の経験の期間は、いまの4年から2年に短くなります。
二級建築士や木造建築士の免許を受けるために必要な実務の経験の期間は、いまの7年から4年に短くなります。
大学などに在学中でも、一定の条件を満たせば、建築士の試験を受けられるようになります。
改正法の要綱には、この法律は公布の日から3年を超えない範囲で政令で定める日から施行し、ただし、契約の適正化の部分は1年を超えない範囲で政令で定める日から施行する、と書かれています。
契約の書面と見積書の部分は、改正法の附則で、公布の日から1年を超えない範囲で政令で定める日から施行される規定にあたります。
免許や試験の条件の部分は、この1年以内に始まる部分とは別で、始まる日は、今回の政令では決まっていません。
免許や試験の条件が、いつから変わるのかは、確認した資料には書かれていません。
この記事で確認できていないこと
「リフォーム」という言葉は、確認した公式資料の中には出てきません。
どんな工事なら対象になるかの細かい線引きは、確認していません。
罰則や、決まりを守らなかったときの扱いは、確認していません。
契約の書類の書き方や様式を決める国土交通省令の内容は、確認していません。
なぜ決まりを広げたのか、なぜ見積書は努力義務なのか、くわしい理由は、確認した資料には書かれていません。
報道の本文は、この環境から読めなかったため、確認していません。
出典|確認した情報源
- 一次情報報道発表資料:改正建築士法の施行に伴う関係政令を閣議決定(国土交通省)(国土交通省)
- 一次情報建築士法の一部を改正する法律 要綱(国土交通省・PDF)(国土交通省)
- 一次情報建築士法施行令の一部を改正する政令案 案文・理由(国土交通省・PDF)(国土交通省)
- 一次情報建築士法の一部を改正する法律(令和8年法律第74号)(参議院・PDF)(参議院)
- 一次情報建築士法(現行条文)(e-Gov法令検索のデータ提供API・XML)(e-Gov法令検索)